さをり織りフレームアート作家のやまもときよえさんにお話を伺いました。
やまもとさんは今年のGWに初の作品展をしました。
※さをり織りとは、
ルールも手本もなく、自分の感性を最大限に引き出す画期的な手織りです。
さをり織りの綺麗な布があったのが、作品作りのきっかけです。
――さをり織りのフレームアートを作ろうと思ったきっかけを伺いたいのですが。
「さをり織りという綺麗な布があったから。勤めていた障害者支援施設の利用者さんが、さをり織りを作っているんです。さをり織りの布は洋服とかショールとかバッグとかの製品にするのですが、その時に出る端切れが利用されないままになっていて」
――職場でですか?
「そうです、それを見てもったいないなと思って、何か利用できないかと思ったのがきっかけです」
――それを貼って作品にしたいと。
「その時は具体的にどういうものということは考えていませんでした。でも画用紙にその布の端切れをボンドで貼って、ひとつの絵のようにしているのを見て……、職場の所長が作っていたんですが、それを見ておもしろいなと思ったんです」
――それで自分でも作ってみようと?
「いえ、その時は考えていませんでした。その頃、ちょうど退職する職員から小さな額を頂いたんです。机の上に置いていたのですが、そこにさをり織りの布を入れることを思いつきました」
――貼るというより、入れるだけですか?
「そうです。でもそれがとても良かったんです。布の温かみとか華やかさだとかが。布の使う場所によって全然イメージが違って、とてもおもしろいと思いました。そんなふうに最初は入れるだけでした。布のどの部分を使おうかと考えるだけでも楽しくて。で、それを施設内に勝手に飾っちゃったんです(笑)
だんだん、ただ布を入れるだけではつまらないなと思い始めて、絵にしてみようと思い、最初に作ったのは茄子の絵でした」
――布の端切れを入れるだけではなく、初めて形に切って、貼って、絵にしたんですね。
「はい。それを見てくれた人がおもしろいと言ってくれて、言ってもらうとやる気も出てきて。他のデザインのものも作り始めました。葡萄、ニンジン、アスパラガス……、どんどん作って飾りました」
しばらく飾っていたら“これ売れるわよ”と言われるようになりました。
――全部フレームに入れて飾っていたんですか?
「全部、フレームに入れて飾りました。それをしばらくやっていたら、“これ売れるわよ”って言われるようになったんです」
――他の職員の方たちからですか?
「職員や、さをり織りの仕事をやっている方から。売るとなると今までのように好き勝手にやっているわけにはいかないと思い、真剣に取り組むようになりました。
施設のお祭りとか障害者のフェスティバルとか区の行事に出したりして、最初はあまり反応がなかったのですが、少しずつ売れ出して、本当に売れるんだ……、と思いました」
――やまもとさんの作品だけを売るスペースを設けて?
「いえ、さをり織りの製品を売るスペースの中に置いてもらうという感じでした。売れたよ、と報告を受けるととても嬉しくて。
そのうちに作品をすごく気に入ってくれる方が現れたんです。とにかく作ると買ってくださるんです。といっても多くても月に2,3点しか作れないのですが。
“次はいつ出来るの?”と聞かれるようになりました」
個展は夢のような話で、実現するとは思っていませんでした。
――励みになりますね。
「励みにもなるし、責任も感じるようになりました」
――GWの作品展には来てくださったんですか?
「はい」
――たくさんの方々に来て頂いて、作品展は成功でしたね。
「私にとっては大成功です」
――やまもとさんの人徳ですよね。人を集めるってすごく大変なことだと思いますから。
「中々会えない人たちが来てくれて、まるで同窓会のようでした。作品作りを始めて周りから“個展やればいいのに”と言われても、夢のような話で実現するなんて思っていなかったので」
――不思議ですね。すべてつながっているんでしょうね。最初は点と点だったものがつながって線になって、「さあ、これをやりなさい」ってなることってありますよね。
「そうですね。本当に。再会から新たなつながりもできたし」
――それは素晴らしいですね。
作る作業は苦になりませんが、アイディアを出すのが難しいです。
――作品作りをしていて大変なことはありますか?
「何を作るのか、デザインを考えるのが大変です」
――絵は好きだと伺いましたが。
「見るのは好きです。作る作業も好きです。でも何を作るのか、そのアイディアを出すのが難しいです」
――基本的に自分でデザインを考えるんですか?
「考えるのもあるし、誰かに描いてもらったものをモチーフにすることもあります。自分だけでアイディアがどんどん出せたらいいなとも思います」
――もっと本格的な仕事にしたいと思いますか?
「引き受けた事は責任を持ってやっています。でも周りが仕事になると言ってくれても、あまり重たくなってしまうのが嫌だなって思ってしまうんです。全然、求められない、期待されないのもつまらないですが、今くらいの求められ方がちょうどいいかなと」
――そのあたりのバランスは難しいですね。
「完全に仕事なんだと思うとどうなってしまうんだろう、と自分でも読めないという怖さがあるんだと思います。わからないから、自分で気持ちをセーブしているというのもあると思います。あまり力みすぎないように。楽しく作っていきたい、見る人にも楽しんで頂きたいという気持ちが強いので」
――仕事として、広がっていきそうになったことはありますか?
「最初にさをり織りの絵を作っていた所長が印刷工場に異動になって――そこも障害者の方たちが働いているところなんですが――、ある時連絡がきたんです。“やまもとさんのさをり織りの作品を使って、商品を作りたい”って。
ちょうどその翌年がうさぎ年だったので、雪ウサギを作りました。そのデザインを元にランチョンマットを作ってくださり、雑貨屋さんにセールスしてくれて、お店に置いてもらうことになりました。結構評判がよくて追加注文が何度か来て、全部売れたんです。それもすごく嬉しかったです。ま~、それで終わってしまったんですが」
――つなげていこうと思えばつながりそうでしたか?
「私はデザインを買って頂いて、その後のことはわからないんです。自分でセールスをしたわけではないので。ランチョンマットのほかに二筆箋なども作ってくださいました」
――またどこかでつながっていくかもしれないですね。縁って不思議なものですから。
「話がくれば、また作りたい気持ちはあります」
――その所長さんもまだ作品作りをされていますか?
「いえ、もう退職もされて、今は作っていないのではないかと思います。GWの作品展には来てくださいましたが」
さをり織りを多くの方に知って頂きたい、作品展もまたやりたいです。
――失敗談はありますか?
「先程の話の続きなのですが、うさぎ年の次が辰年、今年ですね、辰年だったので、辰のデザインを頼まれたので、タツノオトシゴをデザインしたんです。でもタツノオトシゴではなく、龍でなければダメだって。で、龍をデザインしたんですが、これじゃダメだって。可愛くデザインしたんですが、手足がなくて」
――龍って手足がありましたっけ?
「あるんです。それでつながっていかなかったというのもありますね」
――やっていてよかったと思うことはありますか?
「さをり織りの存在を少しでも多くの方に知ってもらえることです。作品展もそのためにもなったと思います」
――今後の抱負はありますか?
「繰り返しになりますが、さをり織りを知って頂き楽しんで頂くこと。作品展もまた別の形でやってみたいです」
(2012年12月1日)
とてもあたたかみのある作品ばかりで、
やまもとさんのお人柄が作品にもあらわれていると思います。
今後の益々のご活躍が楽しみですね^^