美術家:中堂泰志さん

美術家の中堂泰志さんにお話を伺いました。
HOMEPAGE:http://www.geocities.jp/shimokitazawanakado/


中堂さんの作品。

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北欧の陶器が展示されている一室に、ずっといた

——陶芸を始めたきっかけについて。

中堂泰志さん(以下、N):元々、旅行会社で働いてました。
今は美術があるので一番ではないんですが、以前は旅行が一番好きだったんです。
それで旅行会社に入って、海外勤務がしたいと思ってたんです。
遊びで旅行するのは、長期だとしても、やろうと思えば誰でもできるけれど、海外で、仕事で、ちゃんと収入を得るというのをしたかったので。
海外勤務は、外資系の旅行会社に入った方が可能性が高いというのが、当時の自分の調べでわかったので、スイスの旅行会社に入って、最初は大阪勤務でしたが、最終的にバンクーバー(カナダ)勤務になりました。
でも、「次は旅行会社を自分でやって旅行業界を変えてやる」というような意気込みがあったわけではないので、行って一年くらいすると、このまま続けてていいのかなみたいな気持ちになってきて。
同僚も2種類に分かれて、僕みたいに海外での勤務という経験を積みたい人と、カナダが好きで、永住したいという人と。
それで自分はやりたいことはやれたし、もういいんじゃないかなと思って。
で、話は前後するんですが、バンクーバーに行く前、当時気になっていた女の子とデートで美術館に行った時、そこの北欧の陶器が展示されている一室に、デートの相手があきれるくらい、ずっといたということがあったんです。
今まで全然興味がなかったのに、なんで突然こんなことが起こるのかわからなくて、でも、見ながらすごく考えていることに気づいたんです。
「俺ならこの色はもっと違うふうにする」とか「この形はこうする」とか。
デートそっちのけで、自分の中の変化の方が重要になっちゃって。その女性には申し訳なかったんですが、なんで自分がこんなことを考えるんだろうと思ったら、自分の頭の中のようにできたら、もっといい作品になると思ってるからだという結論に達したんです。
でも美術も陶芸もまったくやったことがなかったし、本当に自分ができるのかなというのがあったんですが、やってみなければわからないじゃないですか。一度やってみて、頭の中で考えてるのとは違うんだというのがわかれば、やめればいいわけで。
でもその時には海外で働きたいというのがあったんで、それをやる前にやめちゃうのは何事も中途半端になる気がして。やると決めたこと(バンクーバー勤務)はやったんです。それでバンクーバーで勤務しながら先を考えた時に、陶芸をやりたいというのがまた出てきたんです。
美術系の学校を調べたら、やっぱり入学試験があるんですが、自分には基礎がなにもなくて。でもそこで受からなかったらそれだけのもんなんだなって思って、なので、試験時間の半分くらいは瞑想状態で、あとの半分でラストまでやって、結果的には受かりました。

――専門学校ではなく、大学ですか?

N:京都造形芸術短期大学です。
大学(立命館大学)は卒業していたので、陶芸を習う事だけを目的として入学しました。

誰でもいる場所で展覧会がしたい

――陶器といっても焼き方もいろいろありますよね。

N:最初見たのが北欧の陶器だったというのもあるんですが、僕は伝統工芸に憧れて始めたわけではないんです。
なのでそういう伝統工芸を教えるところではなく、もっとアカデミックなところでやりたかったんです。
でも入学してみると、弟子と師匠みたいな関係が校内でもあって、まったくアカデミックじゃなかったんです。
最初はおとなしく従ってたんですが、途中から反発するようになって。
美術の世界って、マイノリティというか、特定の人たちだけが詳しいみたいなところがあるんですが、そういうのが嫌だなと思って、誰でもいる場所で展覧会がしたいと思ったんです。
京都で勉強していたんですが、思いついたのが高瀬川。
当時の京都の中心というのが京都駅ではなくて私鉄の四条河原町というところで、その周りに繁華街があって、そこを流れている川が高瀬川なんです。
川幅が狭くて、5㎝~10㎝くらいの浅い川で、僕はやるなら繁華街じゃなくて川の中でやろうと思って、どうせならどーんとやりたかったので、一般のアーティストを集めてユニットを作ったんです。
その時の団体名が”POSITIVITY ART ORGANIZATION”で、僕が代表をつとめました。最終的には60名くらい集まりました。(展示会名は”POSITIVIVY ART PROJECT’96″)
川を使うために許可をとらなくちゃならなくて、最初は学生だったから相手にされなかったんですが、調べていくうちに、地域住民の申請だったら通りやすいというのがわかって、そこから地域団体に接触を始めて、許可をとることができました。

――川原を使ったのではなく、川を使ったんですか?

N:川をまたいでステージをつくり、パフォーマンス(和太鼓やファッションショー)をやりました。
その他私を含めた立体造形や平面は川の中で、立体はそのまま川底から設置し、平面は川底からイーゼルなどを立て固定して展示しました。
スポンサーは入れないで、会費を出し合ってやったんです。

ちょっとお茶しに来たところに美術作品がある

――ギャラリーを作ったきっかけについて。

N:美術家は作品を作ったらギャラリーで発表するっていう形を、疑問に思ってたんです。
一般の人たちはそれほどギャラリーに興味がないですから。
それに通常の展示会は期間が短くて(一週間)、気づいた頃には終わっているという感じなので。
そういう思いがあったので、ギャラリーではなくて、ギャラリーカフェを作って、美術に興味がなくてもちょっとお茶しに来たところに美術作品があるというのをやりたいと思ったんです。
そこでは全部自分が作った器を使っていました。
あと貸ギャラリーをやっていて、アーティストの展覧会もやりました。

――コーヒーを淹れたりもなさっていたんですか?

N:やってました。一人でやってたんで。

――ギャラリーは長くやっていたんですか?

N:2006年から4年間。最近、閉めました。

――閉めた理由は?

N:あまり儲からなかったですね。狙っている点は悪くないと思うんですが。

――そう思います。

N:ニーズが少ないんですかね。来てくれた人はみんな喜んでくれてたんですが。普通のギャラリーは緊張感があるけど、お酒とかお茶を飲みながら、のんびりと鑑賞できるんで。
でもそういう美術に興味がある人が、そんなに多くないんですかね。

――でも、作品を創っていて、それを発表したいと思っている人にとってはニーズがあると思うのですが。

N:そうですね、料金も普通のギャラリーの半額くらいだったかと思います。もっと多くの人に美術に興味を持ってもらいたかったんですが。

――また(ギャラリーを)やりたい気持ちはありますか?

N:機会があれば。ただ次にやるときには店は他の人に任せようかなと思ってます。自分の作品を創る時間がなくなってしまうので。

――師匠はいますか?

N:伝統工芸ではないので、いません。
だから大変ですね。伝統工芸だったらある程度マニュアルがあるんですが、なにもないところから始めるんで、結構失敗もあります。

――陶器といってもいろいろありますが、どういう作品を創られるんですか?

N:メインはオブジェです。抽象的な頭に浮かんだものを創るんです。

韓国の方たちが次々に来て、「サイトを見てきました」

――失敗談はありますか?

N:頭の中の世界は自由なので、いろいろイメージするんですが、現実に作ってみようとすると不可能な形態だったりするんです。
頭の中のイメージと現実の中間に立って、現実の中でどう構築するかという作業になるんですが、かなり失敗します。色も思ったように出なかったり。

――焼くときは窯があるところまで行くんですか?

N:自分の窯を持ってるんです。店を持つより先に作りました。温度の微妙な調節など、人と一緒にやっていると自分勝手にできないので。

――印象的な体験談はありますか?

N:韓国の旅行者の方がたまたま店に来て、気に入ってくれて、韓国で宣伝してくれたみたいで、日本に来る旅行者が僕の店に来てくれるということがありました。
韓国の方たちが次々に来て、どこで調べたのかって聞いたら「サイトを見てきました」って。
一般の旅行者の口コミが韓国のネットで広がり広く知られるようになったんです。
よくご覧になって頂いていたのは『wingbus』というサイトです。

――美術に興味がある方たちですか?

N:いえ、一般の観光客の方たちです。
感想を書いてもらうノートを置いていたんですが、韓国語で書かれていて、次に来た日本語が話せる韓国の方に訳してもらったり。結構、いいことを書いてくれていて嬉しかったです。

自分らしさを最も表現できるのは自分だけ

――心がけていることについて。

N:頭の中にある世界を現実にしていくんですが、もちろんそのままを現実の作品にするのは無理なので、落としどころというのがあるんですが、その落としどころの水準を高く保つことです。
自分の中で納得できないと、完成品にはならないので。

――陶芸を始めて、あらためて気づいたことはありますか?

N:僕も最初から美術をやっていたわけではないので、遅すぎることはないということです。
自分らしさを最も表現できるのは自分だけだと思うんです。
そして、その自分らしさを高め、昇華して最高のかたちに表現できれば、その表現は誰にも負けない最高のモノになると思います。

それが、人によって陶芸だったり絵だったり、美術じゃなかったりすると思うんですが、なにか自分に合うものがあると思うので、それに気づいたら、それをやっていくといいと思うんです。
始めるのに遅すぎることはありません。

――やっていてよかったと思うことはありますか?

N:作品を買ってもらえると、やっぱり嬉しいです。誰でもお金は必要で大切なものだと思いますが、それを出してまで買ってもらえるのは、例えいくらであろうと嬉しいです。
娘さんが“お父さんのプレゼントに”って買ってくれたり。その前に家族で見に来て、お父さんが気に入ってくれた作品があったからって、娘さんがプレゼントに選んでくれたんですね。

続けたいと思っているのなら、答えは“諦めないこと”

――今後の抱負、アピールについて。

N:数日前に作品ができたところなんですが、また次の作品に取り掛かろうと思っています。今までギャラリーがあって作品創りをする時間があまりとれなかったので、創りまくろうかと。
技術論を大切にする人と、アイディアにこだわる人とがいるんですが、技術にこだわる人は職人さんになっていく場合が多いんです。
僕はアイディアありきで、創りたいものがないのに、創る意味はないと思っているので、創作意欲がある限り、創り続けます。

――受注して創ることもありますか?

N:あります。その場合、事前の打ち合わせが重要で、立体造形として現実的には作るのが不可能な形態を希望される方もおられるので、納得して頂けるまで説明をしてから創ります。

――美術家を目指す人へのアドバイスはありますか?

N:実際、美術でやっていくのは大変だと思うんです。自分からやめていく人がほとんどです。続けるには、“諦めないこと”というだけですね。
プロになっている人も、ちょっと前までは全然お金にならなかったというケースもあるので。
何年もひとつのことに取り組んでいるのは大変だと思うんですが、それでも「やるのか」「やめるのか」が分かれ目だと思うんです。
やらなくちゃならないわけではないので、やめるのも自由ですが、それでも続けたいと思っているのなら、答えは“諦めないこと”だけだと思います。

(2010年11月15日)

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「自分らしさを最も表現できるのは自分だけ」、共感します。
本当にその通りだと思います。
中堂さんの作品、素敵ですね。個人的に好みです^^
これからのますますのご活躍に期待します。

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